「女子選手の指導について」
財団法人 日本サッカー協会 サッカー指導教本 2002年度版より出典。

1.女子選手の指導
 近年、女子サッカーがめざましい進歩を遂げています。世界レベルの大会にも女子代表チームが参加し、国内でもLリーグが開幕、将来のLリーガーを
目指す少女も増えています。
 日本サッカー協会によると女子サッカーの加盟登録選手数は23,796名となり、中でも小学生年代は7,005名(1997年3月31日現在)と、多くの小学生の
女子がサッカーを楽しんでいます。Lリーグでも小学校時代からサッカーをしてきた選手が増えており、バレーボールやテニスと同じように女子スポーツの
選択肢の一つとしてサッカーが定着してきました。
 ドイツでは12歳頃までは男女一緒にプレーすることを奨励しています。こういったサッカー先進国での育成方をを日本でも行う事により、将来的に日本
女子代表の強化に繋がってきます。
 長期的な日本サッカーの強化・普及を考えると、女子選手への指導も非常に重要になってきます。

2.一般的な女子選手の特徴
【身体的要素】
@ 男子との身体能力の差
 この年代では、一般的に女子の方が発育・発達が早いと言われています。ですが、大脳の可塑性や神経系の発育には男女間で大きな差は認められ
ていないので、プレ・ゴールデンエイジからゴールデンエイジにかけての年代は、男子と比べると短くなってしまうと考えられます。
 小学生年代での運動経験が将来のスポーツ能力に重大な影響をもたらします。前述のドイツでは男女一緒にプレーすることを奨励しているように、身
体的な能力差はそんなに気にするようなものではありません。その逆に、女子選手の方が上手にプレーしたり、身体的に大きかったりする事もあるので
す。
A 生理(月経)
  男性の指導者においては女子選手の生理について「直接聞けない」とか「わからない」といったジレンマを感じたことかあるかも知れません。近年、初
潮年齢は小学校5〜6年生から中学校1年生位だといわれています。ですが、激しい運動により月経初来が遅れるといった事例も報告されています。生
理については、個人差はありますがスポーツを行う上において特に障害になるようなものではありません。しかし、女子選手の殆どは男性に月経の話を
することに抵抗があるため、母親を通じて情報を得る等の配慮が必要な場合もあります。そして、男性の指導者も生理についての一般的な知識は身に
付けておく必要があります。
【心理的要素】
 女子選手を指導するに当たり、最も難しいと言われるところであり、特徴的な部分でもあります。
 個々によって表現の方法は色々ですが、どの女子選手も指導者の言動をよく観察し、気にします。指導者と1対1の関係で物事を考える傾向にあるの
で、常に「見てもらいたい」という思いがあります。
 また、依存心が強い傾向にあり、他の上手な選手に頼りがちになったりします。出来るだけ励まし、誉めてあげて下さい。それぞれが良いところに自信
を付けて、どんどん伸ばしていけるような働きかけをしていきましょう。

3.技術的要素
【ヘディング】
 ヘディングは女子選手にとって最も苦手な技術といえます。「恐い」とか「痛い」といったイメージを取り除いてあげることが必要です。初めは、おでこの
上にボールを乗せたり、自分で投げたボールや、ワンバウンドしたボールをヘディングすることから始めましょう。少し柔らかめのボールを使うと効果的
です。毎回の練習で少しづつ慣れ、「恐い」「痛い」イメージを変えてあげることが大切です。これは胸でのトラッピングにも同様なことが言えるでしょう。
【投運動】
 女子は往々にして、「投げる」という動作が男子に比べると非常に劣っています。サッカーではスローインが必要な技術ですので、様々な動きの中での
「投げる」動作を練習に取り入れていくと良いでしょう。

4.その他 〜社会的要素など〜
【コミュニケーション】
 女子選手の場合、指導者の技術的要素よりもコミュニケーション要素が重要になってきます。ですから、どの選手にも平等に接することが大切です。指
導者の自分と他選手への接し方の違いについて、男子と比べると非常に敏感に反応する傾向にあるからです。
【男子との活動】
 小学生年代では、身体的能力差はあまり見られません。前述のようにドイツでは男子と女子が一緒に活動することを奨励しています。指導者は是非そ
ういった環境を提供してあげて下さい。実際、女子日本代表選手の中でも、小学校時代に男子に混じって活動していた選手は少なくありません。女子だ
からといって特別扱いする必要は無いのです。

「男の子と同じように、女の子もサッカーが好き!」

指導者は常にこのことを覚えておきましょう。そして「大人も子供も楽しめるサッカー」から「大人も子供も、男の子も女の子も楽しめるサッカー」にしてい
きましょう。



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